フラスコ苗の植出し方法と管理

はじめに
 この度はお買い上げ頂き誠にありがとうございます。フラスコ苗は暗所に長期保存すると徒長いたしますので、お受取り後はお早めに開梱して直射の当たらない場所で保管してください。お送りした苗の強光線処理はしてございますので、ハードニングは低湿度処理だけです。苗はすぐに植え出しできるサイズになっております。

準備と用具
 植出しにあたって数日前からから準備をしておきます。まず最初に苗を管理する場所ですが、大抵の場合菌類に汚染されておりますので温室全体の消毒を行い、雑菌を減少させておきます。順化のため、開栓して2〜5日内でカビの生えない程度に、室内もしくは日陰で放置してからフラスコから出して頂くと苗が締まり、丈夫になります。
 水苔は前日から湿らせておくと水気が良く馴染み、千切れず使いやすくなります。強く握ると滴る程度に水を含ませ、よくほぐして空気を入れおくと、翌日使う時にはスポンジのように弾力が出て根を柔らかく包みます。
植え出し前に水苔をよく湿らせておきます。水の量は手で握ってスポンジのようにゆっくりと戻ってくるくらいです。 用具の一例。左から3号鉢、底網、発砲スチロール片、カギ棒、ピンセット、かなづち、ザル、新聞紙。
上部のゴム栓を抜いた状態。直射日光の当たらない室内で数日間この状態を保ち、外部の空気を取り入れ空気の成分と湿度をほ場に近づけ順化させます。

苗出し
苗を出すには瓶の口から取り出す方法と、瓶を割って取り出す方法があります。
口から出す時は、瓶を横から軽く手で叩き、培地を緩めてからフラスコの口から針金やピンセットなどで根の付け根をつかみ、一本づつ注意深く引き出します。
フラスコ出しで瓶を割る時、割れたガラスで怪我を心配される場合は写真のように針金を曲げた棒で少しづつ引き出していきます。 瓶を割るときに飛散防止のために新聞紙を一枚巻きます。

 瓶を割る場合は、フラスコに新聞紙を巻き、底の角をカナヅチで軽く一周叩いて、底を抜きます。この時に強く叩くとガラスが細かく割れ、処理が面倒になりますが、上手に叩くと底だけきれいに抜けてきます。ガラスで手を切らないように注意しながらガラスを取り除き、ザルを用意して培地ごと苗を入れ、流水で培地を洗い流します。この時、根を傷めないように最深の注意を払ってください。培地が残っていると、カビの原因となりますので、よく濯ぎます。
底との境目部分を一周、かなづちで軽く叩いていくと、底だけがきれいに抜けます。強く叩くと破片が細かくなるので注意してください。 苗をザルに移し、ガラスに注意しながら苗を持ち、ガラスの底を取り除きます。
苗を流水でよく洗い流します。培地が残っていると、カビの原因となりますので、きれいに取り除いてください。

パフィオの場合は根毛が多く根が絡みやすいので、取れる範囲で構いません。その場合殺菌剤を使用します。


植え付け
 洗浄の済んだ苗を大きさ毎に選別し、根元をしっかりと、先端部分はやや柔らかく巻いていきます。あまり深く植えると腐りの原因となるので、巻き込むのは根の上5mmていどくらいまでが適当です。水苔の量は写真を参考にしてください。
 9cm程度の素焼き鉢に網戸など防虫ネットを敷き、半分程度の高さまで砕いた発泡スチロールなどの水を吸わない物を入れます。
洗浄の済んだ苗です。鉢に底網を敷き、発泡スチロール片を半分弱くらいまで入れておきます。 苗に水苔を巻いていきます。一つの苗に使う水苔の量はこのくらいが適当です。

その上に先程の、苗を一つづつ水苔で巻いた物を10苗ほど並べていきます。水苔で畝を作って並べていく方法もありますが、鉢上げする時に根を痛めやすいので、一つづつ巻いた方が後々の生育が良くなります。苗数が足らなかった場合は、すきまに発泡スチロールを詰めますが、板などを使うとその部分だけ乾きませんので、砕いたものを使ってください。
苗を巻いた状態。苗は一つづつ巻いたほうが鉢上げの際に根が傷みません。 苗を巻いた水苔を一つづつ並べていきます。今回は3号鉢に2、3、3、2といった感じで4列10苗入れました。
植え終わった状態。スペースが空いたら発泡スチロール片を詰めておきます。 鉢底までは水が必要ないので、ウォータースペースは取ってありません。



その後の管理
 出来た苗は「CP苗」と呼びますが、幼い苗は赤ん坊と同じで、乾燥や直射日光に弱いので、1週間程度、直射の当たらない室内や、70%以上の日陰で植え込み材をあまり乾かさないように管理し、その後1ヶ月程度かけて徐々に水気を減らしていきます。
 植出し以後、新しい葉が成長してきたら通常の、「乾いてから水やり」の管理で結構ですが、2号鉢に植え替えする頃までは成株よりも、やや暗めの場所で水も多めに管理してください。
鉢上げの時期は植出し後の葉が2枚になる頃、または込み入って風通しが悪くなってきた頃で、季節は最低気温が15度以上が保てるなら年中、それ以外では冬は避けてください。

薬剤について
 フラスコの中の苗は無菌ですので本来殺菌剤は必要ないのですし、殺菌剤は多少なりとも苗にダメージを与えますので、極力使わない方が良いと思います。パフィオなど根毛があり、培地をきれいに落とせなかったり、バークやミックスコンポストなど、カビの生えやすい植え込み材では必要になると思います。

 カビやバクテリアが発生する方は、栽培環境が汚染されている事をまず考えてください。栽培する環境が汚染されている場合は室内栽培でもカビは生えますが、植出し前に温室や他の株、植え込み材を消毒しておくと、苗のカビや芯腐れが防げます。
 それでも病気が発生した場合は速やかに、症状にあった薬品を散布します。薬品の種類に関しましては、タチガレン、オーソサイドなどホームセンターで手に入る物で結構です。用法要領を守れば一発で利きますので、効果が見られない場合は、使用する薬剤が間違っている可能性があります。症状をよく観察して、別の薬品を検討してみてください。













































































































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